レビュー一覧
| 価格: | ¥ 1,680 | ISBN(13桁): | 9784276211285 | ISBN(10桁): | 427621128X |
|---|---|---|---|---|---|
| タグ: |
タグはありません
|
||||
この作品のレビューが1件あります
| 小林史佳/miu_palさんによるレビュー | <2010/02/05 10:33> |
積読消化。意外にも、すごく面白い本だった。
一応、服部良一の評伝というかたちを採ってはいるけれど、戦前でも戦後でもなく、一般にはほとんど知られていない戦時中、上海滞在時のエピソードにスポットを当てているのが特徴。
生きて日本に戻ることは出来まいと確信した服部は自分にとっての「ラプソディ・イン・ブルー」として、シンフォニックジャズ「夜来香ラプソディ」を作曲。これを音楽活動の総決算とするつもりだったという。
また、黎錦光、陳歌辛、姚敏といった中国人作曲家たちとの親交にも多く筆が費やされている。中国音楽のジャズ化を模索していた黎錦光は、日本の国策映画から流れ聴こえてきた「蘇州夜曲」に強くインスパイアされて、オリジナルの「夜来香」を作曲した。
「蘇州夜曲」から「夜来香」へ。「夜来香」から「夜来香ラプソディ」へ。音楽家同士がキャッチボールする姿が描かれている。
昭和30年代、演歌の時代に入ると、途端に服部からヒット曲が生まれなくなってしまうが、その頃、香港に活動拠点を移していた姚敏の招きで、日本未公開の香港映画の音楽監督を多数務めていたというのも初めて知った。
中国共産党の文化弾圧の犠牲となった黎錦光、陳歌辛の、その後の人生の苛烈さも印象を残した。陳歌辛は「Rose Rose I Love You」のタイトルでスタンダードになった「薔薇処処開」の作曲者。彼については詳しく触れられていないが、英語版wikipediaなどによると、共産党政権樹立後まもなく労働改造所に送られて46歳で死んだという。
情報編集の巧みさを強く感じた一冊。静かな興奮を味わえた。



